きり まる か いま ー る。 爪きりーーー: おばこのブログ

寝たきり56歳ーその5(ある日どこかで)|スパイス|note

きり まる か いま ー る

うつ症状が始まりました。 毎日同じ時間(夕方〜夜)にかけて突然、涙が 襲ってきます。 亮くんと夏祭りに行ってるときも、突然いつもの感情が襲ってきて、花火会場で涙が止まらなくなりました。 本当に毎日この時間にかけて涙に襲われるので自分が怖かったです。 急に猛烈な自分じゃない何かに襲われるような感覚で、死にたくなるのです。 人間ってこんなにもネガティブになれるの?ってくらい何に対しても意欲、興味が湧かず、久々に会える彼とのデートさえも意欲がなく、楽しいっていう感情が私の中から消えました。 家に引きこもりになり、ずっとベッドの中にいました。 友達と遊ぶ機会も減りました。 遊んでも楽しいことしても美味しいもの食べても心は無でした。 私は人より明るくポジティブ思考なところが長所として生きてきたので、どんどん変わっていく自分が本当に苦しくて苦しくて、でも誰にも分かってもらえない苦しさ。 今までの私なら、じゃあ自分が努力して変わればいいやって考えてたはず。 でもそんな元気はなくて、全く意欲が湧かなくて本当に何も考えれなくて、何が苦しいかももはや分かんなくて。 でも苦しくてたまんなくて、こんな日々を送るなら死んだ方がマシだと心から思いました。 自分にそんな感情が芽生える日が来るなんて思ってもなかった。 遺書まで書きました。 死にたいって心から思うのに怖くて死ねませんでした。 だからといって生きたいなんて1ミリも思いませんでした。 でもそれは朝から夜まで続くのではなく、日中はいつもの自分でいれるときもありました。 その時間で日記を書くようになりました。 今日はどんな1日だったか、昨日に比べて気持ちはどうか。 前日より気持ちが楽な日は心から自分を褒めてあげます。 本などでうつの勉強も沢山しました。 うつ症状も自分。 全部自分なんだから受け止めて自分を理解してあげる この言葉で少し楽になりました。 ほんの少しずつ泣かない日や一日中元気な日が増えてきて自信がつきました。 でもそれは亮くんという彼の大きな存在のおかげでした。 遠距離で会えない分、常に気にかけてくれていて、毎日明るい言葉で私を励まし続けてくれました。 どれだけネガティブな発言をし続けても明るい言葉をかけ続けて笑わせてくれました。 本当に私の中で大きな存在です。 俺がおるけん大丈夫!なんの根拠もないけど俺がおる限り絶対に絶対に大丈夫!ずっと言われてたこの言葉で本当に救われました そんな中で旅行にいこう!って言ってくれて 過去に満員電車の圧迫感でパニック発作で運ばれてトラウマになってから2年間一度も電車に乗れてないのに、電車で約5時間。 大阪に行こうって言われました。 私の中では考えられず前日もドキドキしてパニックになったらどうしよう。 そればっかり考えて眠れませんでした。 でも、私も前を向かなきゃって思わせてくれた亮くんとなら絶対に大丈夫っていう自信がついてきて、亮くんとなら!って電車に乗ることができました。 帰りの新幹線では発作手前までパニックになっちゃって、苦しかったけど、お薬飲んでパニックのこと考えないようにずっと話しかけてくれていたので、落ち着いてきて無事帰れました。 全力で楽しめていた頃の私に比べて7割くらいの感情は戻ってきたかな😂半年前の自分に、そんなに苦しまなくて悩まなくて大丈夫だよって言ってあげたいです。 できれば抱きしめて背中をさすってやりたい😂 そして先月はついに一生乗れないだろうと諦めていた飛行機に乗れました!🇰🇷 飛行機、電車に乗れない私は一生遠出の旅行はできないって思っていたので夢のようで嬉しくて涙がでました。 もちろん少なくとも息苦しくなったし恐怖感はすごかったけど薬を飲んだり、非常口を選んだり機内の冷房に当たったり、もうそれは色んな対策を尽くして、亮くんと手を握って挑みました!ここまで180度私の人生を変えさせてくれた彼に感謝でいっぱいです。 本当に夢みたい! 前の職場は大好きだったしずっと働いていたかったけど、復帰できるかも分からない状態でいつまでも休職を頂くのは迷惑をかけてしまうので退職という選択をしましたが、いまは別の場所でゆっくりと働いております😌ありがたいことに、 看護師って病棟だけじゃなくっていろーーーんな働き方があるんです😌感謝ですね•

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きり まる か いま ー る

うつ症状が始まりました。 毎日同じ時間(夕方〜夜)にかけて突然、涙が 襲ってきます。 亮くんと夏祭りに行ってるときも、突然いつもの感情が襲ってきて、花火会場で涙が止まらなくなりました。 本当に毎日この時間にかけて涙に襲われるので自分が怖かったです。 急に猛烈な自分じゃない何かに襲われるような感覚で、死にたくなるのです。 人間ってこんなにもネガティブになれるの?ってくらい何に対しても意欲、興味が湧かず、久々に会える彼とのデートさえも意欲がなく、楽しいっていう感情が私の中から消えました。 家に引きこもりになり、ずっとベッドの中にいました。 友達と遊ぶ機会も減りました。 遊んでも楽しいことしても美味しいもの食べても心は無でした。 私は人より明るくポジティブ思考なところが長所として生きてきたので、どんどん変わっていく自分が本当に苦しくて苦しくて、でも誰にも分かってもらえない苦しさ。 今までの私なら、じゃあ自分が努力して変わればいいやって考えてたはず。 でもそんな元気はなくて、全く意欲が湧かなくて本当に何も考えれなくて、何が苦しいかももはや分かんなくて。 でも苦しくてたまんなくて、こんな日々を送るなら死んだ方がマシだと心から思いました。 自分にそんな感情が芽生える日が来るなんて思ってもなかった。 遺書まで書きました。 死にたいって心から思うのに怖くて死ねませんでした。 だからといって生きたいなんて1ミリも思いませんでした。 でもそれは朝から夜まで続くのではなく、日中はいつもの自分でいれるときもありました。 その時間で日記を書くようになりました。 今日はどんな1日だったか、昨日に比べて気持ちはどうか。 前日より気持ちが楽な日は心から自分を褒めてあげます。 本などでうつの勉強も沢山しました。 うつ症状も自分。 全部自分なんだから受け止めて自分を理解してあげる この言葉で少し楽になりました。 ほんの少しずつ泣かない日や一日中元気な日が増えてきて自信がつきました。 でもそれは亮くんという彼の大きな存在のおかげでした。 遠距離で会えない分、常に気にかけてくれていて、毎日明るい言葉で私を励まし続けてくれました。 どれだけネガティブな発言をし続けても明るい言葉をかけ続けて笑わせてくれました。 本当に私の中で大きな存在です。 俺がおるけん大丈夫!なんの根拠もないけど俺がおる限り絶対に絶対に大丈夫!ずっと言われてたこの言葉で本当に救われました そんな中で旅行にいこう!って言ってくれて 過去に満員電車の圧迫感でパニック発作で運ばれてトラウマになってから2年間一度も電車に乗れてないのに、電車で約5時間。 大阪に行こうって言われました。 私の中では考えられず前日もドキドキしてパニックになったらどうしよう。 そればっかり考えて眠れませんでした。 でも、私も前を向かなきゃって思わせてくれた亮くんとなら絶対に大丈夫っていう自信がついてきて、亮くんとなら!って電車に乗ることができました。 帰りの新幹線では発作手前までパニックになっちゃって、苦しかったけど、お薬飲んでパニックのこと考えないようにずっと話しかけてくれていたので、落ち着いてきて無事帰れました。 全力で楽しめていた頃の私に比べて7割くらいの感情は戻ってきたかな😂半年前の自分に、そんなに苦しまなくて悩まなくて大丈夫だよって言ってあげたいです。 できれば抱きしめて背中をさすってやりたい😂 そして先月はついに一生乗れないだろうと諦めていた飛行機に乗れました!🇰🇷 飛行機、電車に乗れない私は一生遠出の旅行はできないって思っていたので夢のようで嬉しくて涙がでました。 もちろん少なくとも息苦しくなったし恐怖感はすごかったけど薬を飲んだり、非常口を選んだり機内の冷房に当たったり、もうそれは色んな対策を尽くして、亮くんと手を握って挑みました!ここまで180度私の人生を変えさせてくれた彼に感謝でいっぱいです。 本当に夢みたい! 前の職場は大好きだったしずっと働いていたかったけど、復帰できるかも分からない状態でいつまでも休職を頂くのは迷惑をかけてしまうので退職という選択をしましたが、いまは別の場所でゆっくりと働いております😌ありがたいことに、 看護師って病棟だけじゃなくっていろーーーんな働き方があるんです😌感謝ですね•

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きり まる か いま ー る

忍たま 土井きり親子 『許すように、包むように』 [newpage] 目が覚めて一番に見たものは どこかの天井だった。 ああ、生きているのか。 誰の役にも立たぬ身に、 天はいまだ私に生き永らえよと言うのか。 抜け忍として追われていたその逃亡中、崖で足を滑らせそのまま落下したはずだった。 急いで身を起こそうとするが 身体中が鋭く痛み 、うめきながらまたそのまま布団に倒れこんだ。 あんまりだ。 崖から落ちながら 私は一度、生きることを諦めたというのに。 「くっ………」 悔しくて、布団を握りしめた。 強く強く、布が破れんばかりに。 「起きたか。 名は名乗れるな?」 背後から静かに、声が問う。 気配を消していたのだろうか。 この私が背後の人の気配に気が付かぬとは。 穏やかな雰囲気はあれど、正体を偽ることは許されない、ただものではない気配に飲まれた。 「………土井、半助。 」 かすれた声で震えるようにそれだけ答えると 声のするほうをゆっくりと振り向いた。 そこには穏やかな顔で薬草を挽いている 忍びらしき男がいた。 私が正直に名を告げたのがわかったのか、目の前の人物からは先ほどまで纏っていた刃物のような空気は消えている。 「そうか。 ワシは山田だ。 山田伝蔵。 安心しなさい、ここはワシの家だ。 もうすぐ畑から妻と息子が帰ってくる。 」 「………助けてくださりありがとうございました。 」 「気にするな。 アンタが勝手に降ってきただけだ。 」 「………すみません。 」 「ははは。 半助か、おまえさん、いい時に起きたな。 今から食事だ。 得したな」 「いえ、助けていただいただけで充分です。 恥ずかしながら私には銭もありません」 「…銭などいらんよ。 いいから食べなさい」 夕陽に照らされた山田という男の顔を見ると 不思議と懐かしい感覚が沸いてきた。 ああ、私が最後に父上に会ったのは、もしかしたら夕暮れの刻だったのかもしれない。 静かな夏の夕暮れだった。 蝉の声がカナカナと鳴き、空には蜻蛉が舞う。 どこかの山から鐘の音が聞こえる。 目を閉じると 見ず知らずの土地なのに ふるさとに帰ってきたような、 叶うものならば帰りたい 戦いなどとは無縁の 平和だった頃の 夏の、記憶が蘇った。 「ちちうえー!!これで、足りますか!」 ぱたぱたと少年が戸口から飛び込んできた。 手にはたくさんの茄子を抱えている。 それはつやつやと光り、太陽の光を含んだ瑞々しい、張りのある紫だった。 「ああ。 良い茄子だな。 うまそうだ。 」 そう父親に言われた瞬間、少年の表情がぱっ、と輝いた。 「はい!僕が水やりの世話をしました!!父上、たくさん召し上がってくださいね!!」 「ああ。 ありがとう」 「こんにちは。 お客様も召し上がってくださいね!」 きちんと挨拶をくれた賢そうな少年があまりにも眩しく、わたしは申し訳ないような気分になった。 「ありがとう。 でも、お客様なんて言ってもらうほど立派じゃないよ。 私は怪我をしてね。 きみのお父上に助けていただいたんだ。 」 少年はきょとん、として大きな瞳をぱちくりさせた。 「でも父上は、大切なお客様だとおっしゃいましたよ?」 「利吉っ、もういいから母さんの手伝いをしてくれんか」 利吉と呼ばれた子は 今、自分はどうやら喋りすぎたらしいと悟ったのか即座に肩をすくめて台所に走っていった。 「………どこかでお会いしましたか?」 そうでなければ、なぜ通りすがりの死にかけた忍者が大切なお客様なんだ。 そもそも何故手当てや食事の世話までしてくれるのだ。 不思議に思い尋ねてみる。 「ん?………ああ。 いや」 「………?」 答えにならない答えに消化不良になり さらに尋ねてみようとすると、台所から凛とした風情の美しい女性が雑炊を運んできてくれた。 「どうぞ。 お口に合うと良いのですが。 ……主人はね、若いときに部下を助けられなかったんですって。 」 「え。 」 かちゃ。 とても美味しそうな料理が盛られている皿からは、ゆらりとやわらかな湯気がたちのぼる。 「部下を助けに行ったのに、間に合わなかったんですって。 それを今でもずっと後悔していて。 あなたが崖から落ちてきたときにね、他人と思えなかったみたいでね。 この若者はワシが助ける、って凄い勢いで走って行ったの。 」 話し終えると、いたずらっぽく首をかしげ夫を見ながら 「ね、あなた。 どうやらあなたの見る目は正しそうね。 優しそうなお方だわ。 」 と微笑んだ。 山田を見ると妻にばらされたことで バツが悪そうに、もう充分に摺り潰されている薬草をまだゴリゴリと棒で潰していた。 「……まあ、そういうわけだ。 遠慮しないでワシの自己満足に付き合うと思ってくれればいい」 山田は すっ、と皿の載る盆を私のほうにすすめてくれる。 「………ありがたく頂戴します。 」 姿勢を正し、頭を下げた。 穏やかな夜だった。 山田は私にこの家で過ごすよう言ってくれ 私はそれに甘え夏の日々をそこで過ごした。 足が治れば利吉くんと畑に出て水汲みに行き 手が治れば草刈りを手伝った。 父に憧れ忍者になりたいという利吉くんに木彫りの手裏剣を作って投げ方を教えたりもした。 人間相手の血生臭い仕事ばかりだった私には全てが新鮮で、飛び出した虫に驚いた情けない私を見て利吉くんがげらげら笑ってくれたりもした。 もうすぐ完治という夏の終わりのある日 丘の畑に立ち尽くしながら私は 焼けるような夕陽が沈むのを見た。 まるで世界が焼けているようだ。 そのときに自分の記憶の中で燃え盛る この世への憎悪の炎は きっと死ぬまで消えないだろう。 そんな気がして、弱く、すこしだけ笑った。 [newpage] 「半助、おまえ、教師になる気はないか。 」 山田にそう言われたのはその日の夜だった。 私はゆっくりと、器に注がれた酒を口に含んだ。 久しぶりのそれは喉を焼くように拡がり体の中で熱を生む。 その有り難いほどの誘いへの答えにはならないかもしれないが、私はゆっくりと口を開いた。 「………死んでも仕方ない、と思ったんです。 わたしは、あのとき崖から落ちながら。 」 「ああ。 」 まるで見当外れな私の返事にも、山田は眉ひとつ動かさずに聞いてくれた。 「ただ、ひとつだけ悔しかったんです。 あれだけたくさんの人間を傷付けておきながら、自分は誰の役にも立たずに、あっけなく死ぬのかと。 」 「ああ。 」 「落ちる間際に、ああ、せめて、小さな動物や虫でもいい、最後になにかを救って死にたかった。 そんなふうに思ったんです。 」 山田は ぐっ、と酒をあおる。 同じ世界に身を置く立場だからこそわかりあえる、忙しさの中に置き忘れた、取るに足らない欠片のような感情。 怪我をした今だからわかる。 その、取るに足らない感情こそが、私たちを形作り生かし続けてくれる力の源だったのだ。 「後悔、か。 ワシもそうだな。 いくら周りにはおまえのせいじゃないと言われても、部下を助けられなかった後悔はな、いつまでも消えない」 消えない。 傷付けて、傷付けられた、記憶は。 世の中のせいにしようとも 時の流れのせいにしようとも消えない。 この手から、消えない。 なにも我々は、 戦いたくて戦うわけでは、ないのだ。 美味いものを食べ酒を飲み歌うほうが好きだ。 こうして野菜を作り風を感じて暮らすほうが好きなのだ。 殺したくて殺すわけでも 死にたくて死ぬわけでもない。 それでも戦わなくては、取られてしまう。 大事なものや、この、命までも。 だから、武器を持つ。 それはただ単純に、明日の自分の命のため。 その生き方を選んだ瞬間から 我々は逃げることすらできない。 この身で、この、こころで 誰かの明るい未来など紡いではやれない。 私は忍びの世界に戻ろうと思っていた。 どんなに綺麗事を並べ立てようが、戦いしか知らない私にできる仕事など、それ以外にありはしないのだ。 「……私には、誰かの未来を導くことなど、到底できません」 「………無理強いはしないがな。 ワシならいつでも今話した学園にいるから、気が向いたら来なさい。 事務でもいい。 何人か欲しいと学園長が話していたのを聞いているよ。 」 「………ありがとうございます」 はい、でも、いいえ、でもなく。 その気持ちに、恩に対してだけ、礼を言った。 これで、いいだろう。 これで、助けられなかったという山田の部下の代わりは務まっただろう。 この優しい人がこれから先、少しは気が軽く過ごせるならば 私などでも役に立てたということだ。 長い長い戦いの人生の ここをほんの休憩地点にして ここでの優しい日々を支えにして わたしはこれから先、生きて行こう。 寝ている山田に向かい深々と頭を下げると 私はその家を後にした。 たぶん起きているのだろうに 山田は、何も言わず私を行かせてくれた。 山田に、この、世話になった家族に 美しい布も宝石もなにひとつ礼を残していけないそんな情けない自分を振り切るように 闇の中を奥深く、走り抜けた。 身なりを忍装束に戻そうと自分の荷物を広げた 瞬間、どくりと心臓が鳴り体が熱くなるのを感じた。 そこに入っていたものは 利吉くんと作ったおもちゃの木彫りの手裏剣と 綺麗に縫い直された忍装束と 丁寧に描かれた 忍術学園の地図だった。 「…っ、」 ああ、叶わない。 あの家族には、その、あたたかさには。 すべて、わかっていたのか。 木にもたれかかり まだ少し痛む右足を庇いながら わたしはその贈り物たちを胸に抱き締めたまま いつまでもその場から動くことができなかった。 ああ、私は。 私は、どうしたら取り戻せるのだろう。 朝日を浴び笑って暮らす そんな日をどのくらい頑張れば取り戻すことができるのだろう。 もう、戻れる気がしなかった。 命など惜しくないと武器を握ることなど。 何も見えないふりをして 人を、傷つけることなど。 諦めたように息を吐いて立ち上がる。 くしゃりと握りしめたその紙は 私を導く、 まだ見ぬ未来への 地図だった。 [newpage] * 「へえ。 それで教師になったんっすか。 山田先生かっこいー!」 「ああ。 懐かしいな。 長々と昔話をするなんて、私もずいぶんと老けたもんだ」 どうして教師になったんすか?ときり丸に聞かれて、山田先生に助けていただいた昔の話をした。 記憶の中にいた、あの頃の自分が今では可愛く思える。 がんばったな、そう、誉めてもいいとさえ思えた。 きり丸とふたり、あたたかな鍋を囲む。 二人で一緒に作った食事を共にして おしゃべりをしながら休暇の日々を過ごす。 この小さな家も、きり丸という存在も あの頃には想像もつかないような幸福だ。 きり丸は食後にと貰い物の桃を剥いてくれながら軽やかに笑う。 「あはは。 老けたって…土井先生の年でそれを言うんすか。 学園長先生に殴られますよ」 「ははは。 それもそうだな。 」 そう。 あれから私は荷物に忍ばせられていた地図を頼りに忍術学園に行き 山田先生と一緒に子供たちに忍術を教える仕事に就いた。 何年かたった今 私は仕事に対して絶対に曲げない信念を持つようになった。 まず、死なない為の技術を教え込むことだ。 傷付けるための技術よりも多く、生き残るための技術を叩き込む。 どんなに周りからそれでは弱虫ばかりが育ってしまうと皮肉を言われても曲げなかった。 死んで欲しくないからだ。 わたしの、教え子たちに。 それはこの世に名を馳せる強者を育てる名誉や誉れよりも、私には大切なことだ。 「せんせー、あした、晴れるといいですね」 「そうだな。 」 「魚、たくさん捕れるかな」 「さあな。 さ、早く寝ような。 夜更かしした体じゃ、たくさん稼げないぞ」 「はーい!うひひ、大儲けできますように!」 眠りについたきり丸を眺めた。 暑さで寝苦しいのか、布団などあってないようなひどい寝相だ。 腹だけは冷やさないように、薄い布団をかけ直してやる。 夜は深く夏から秋に変わろうとする虫の音がりーりー、と響いていた。 あくる朝食事を済ませると支度をして二人で川釣りに向かう。 洗濯や花売りはいい。 しかし川となるとまだ幼いきり丸には危険だからと付き添うことに決めている。 過保護っすねえ、なんて笑いながらも たくさん採れたあとは水遊びしましょうね!なんて無邪気な子供らしさも見せてくれる。 なんだかんだ言って、わたしはきり丸がかわいいのだ。 笑顔を見せられるとつい、甘やかしたくもなってしまうのだ。 帰り道に美味い団子屋があったなあ、夏休みは宿題もバイトも頑張っていたし、なにか買ってやろうかなんて、のんきに考えながら、ひたひたとふたり並んで歩く。 山の裾野にある川は きり丸が見付けた穴場だ。 小さな川だが流れが緩く、岩の隙間などに小さな魚がたくさんいる。 水も浅いから危なくないし、大物を狙う大人は来ない。 私が岩をずらした隙にきり丸が隠れていた沢蟹などを採り、次々と篭に移していく。 「小さくてもカニだからな。 指、挟まれるなよ」 「だいじょぶですって。 」 「油断するな」 「はあい。 」 今日は川の水も澄んでいたおかげで予定よりも順調に進んだ。 きり丸はどんどん沢蟹を採り、あっという間に篭がいっぱいになる。 わたしは少しでも売り上げの足しになるようにと水遊びするきり丸を川岸で待たせて川の奥に進み魚がいないか探していた。 ずいぶん川の奥まで進んでしまったようだ。 なかなかいないものだな。 そろそろ終わりにするか、というときに 川岸で遊んでいたきり丸が 「あたっ!!!」 と叫んだ。 「きり丸ー?」 「なんか、足、刺されたっぽいです、いてて、っ、………うう、うえっ、ふえ、っ、せんせ、やだ、こわい、いたい、うわあああああ!!」 「きり丸!!」 突然なにかに刺された痛みと恐怖で 普段からは想像もつかないような大声できり丸はわんわん泣き出した。 「落ち着け!大丈夫だ!!今いくからな!そこにいろ!」 いかん。 蜂か?虫か?蛇?なんだ!? ばしゃばしゃと進みながら水の重さに慌てた。 駆け寄りたいのに水が邪魔をして思ったよりも前に進めない。 ごろごろと底に沈む石が苔を生やして足を滑らせる。 ざぶざぶと足を大袈裟に上げるようにしながらなんとか進む。 「せんせえ、せんせ………………!!!」 混乱して泣きわめくきり丸は 我を忘れて私のいるほうへ水をかきわけながらざぶざぶと必死で向かって来る。 「!!!だめだ!来るな!!あぶない!」 「やだ、いたい!たすけて!せんせい!!」 「止まれ!!!来るな!!きり丸!!!」 「せん、」 ざぶ、ん 「きり丸ーー!!!!」 きり丸が足を踏み外したそこは 私のいる流れの急な方向へ繋がる場所へ一段下がっていて大人の腰ほどの深さがあった。 あっという間に見えなくなったきり丸がちらり、と手を上げた。 溺れている。 たすけて、せんせい そう、聞こえたような気がした。 どうする、どうしたらいい。 どうしたらいい。 どうしたらいいんだ!!!! 「くそっ!!!!」 私は川岸に戻り 持ち歩いている忍び道具をばさばさと投げ捨てるように撒くと 鍵縄を掴み陸上から木の根に向けて放った。 焦りからか、何度投げても上手くいかない。 「あああああああ!!!!くそっ!!!」 手が震えた。 こうしている間にも どんどんきり丸は流されてしまう。 頼む、頼む!!! わたしはここで死んでもいい あの子だけは助けてくれ!! 頼む!頼む! 神様!!! 「あああああ!!!きり丸ー!!!」 「………ん、せ」 喚きながら がむしゃらに川下に走る私の耳に 川の流れでほとんど雑音しか聞こえない耳に か細い声が鈴の音のように りん、と透明に響いた。 振り返ると川の奥の 木の枝が水上に幾本も伸びている場所で、 にひひ、と得意気にしがみつきながら、 わたしのたいせつな子が ずぶ濡れになり咳込みながらも 私をまっすぐに見て笑っていた。 「…………きり、まる」 「せんせ。 へへへ。 …っ、げほっ、 …せんせ……………たすけて~。 」 へなへな、とその場にしゃがみこむ。 ああ、ああ。 きり丸。 きり丸。 誰よりもたいせつな、 わたしの、たいせつなきり丸。 細い手がしがみつく木の枝 それはまるで、 彼を救うために天から伸びてきた 神の手のように、見えた。 [newpage] 「わ、ちょ、まっ、せんせ、やだあ!!」 「やかましい!!だまれバカモノ!!」 小さな擦り傷だらけのきり丸を赤ん坊のように抱いて川のなかをざぶざぶ進む。 「やだっ、せんせ、はずかしい!!」 「うるさい!また溺れたいのか!!」 「う……」 観念したように きり丸が私の肩を掴む。 「帰ったら説教だからな」 「………へーい。 」 「なんだその返事はっ」 「……………」 「…………こら、聞いてるのか」 「………………。 せんせ、」 「ん?」 「………………ごめんなさい。 」 「……………無事だったんだ。 もう、いいさ。 」 「……足、傷だらけっすね。 」 「たいしたことないさ」 そうだ。 ほんとうに、たいしたことなんかないんだ。 おまえを失う 痛みなどに比べたら。 ぎゅっ、と、つよく、きり丸を運ぶ手に力を込めた。 それに応えるようにして きり丸も私にぎゅっ、と、しがみついた。 泣いているのだろう。 怖かったのだろう。 肩が小刻みに震え息を継ぐ声が胸のあたりから聞こえた。 そのおかげで 私の涙は、 この子に見られずに済んだようだった。 夕暮れ、帰り道。 わたしはきり丸をおんぶして家に帰る。 山からは最後の力を振り絞る蝉の合唱が耳を塞ぐほど響き渡り 田んぼの上にはもうすぐ我々の出番だと言わんばかりに蜻蛉がくるくると舞う。 山の上にはだいだい色の空がひろがり 細長い雲と並行するようにしてその中に点々と黒く、鳥たちの群れが扇ぐように飛んでいる。 「わたしはな、きり丸」 「…はい。 」 説教だと思ったのだろう。 私の腰の横でぷらぷらとしていた足が ぴたりと止まる。 「私は、誰かを助けて死ねるなら、それでいいと思っていたんだ。 それが、忍びをしていた頃の罪滅ぼしになるならば、と。 」 「…………」 「最後におまえを助けて死ねるなら、それでいいと思った」 「そんなのいやです」 「私にはな、今まで、私が死んで泣く者の存在がなかったんだ。 そして、お前がどれほど大切か、失うのが恐ろしいかも、痛感したよ」 「…………」 「わたしはおまえがいなくなったら泣く。 悲しいし、苦しい。 立ち直れないだろうな。 それは絶対に嫌なんだ。 」 「…おれも、先生がいなくなったらぜっっったいに、いやっす」 「うん。 だからな、私を必要としてくれる者がいてくれるならば、私はどんなに重いものをしょってても、前向いて、生きていくさ」 「重いものって?」 わたしの耳の後ろから、声が響く。 「まあ、かっこつけて言うと、過去だな。 」 「……………かこ。 」 「ああ。 昔の、自分。 どうしようもないだめな奴でな。 死にかけたとき、こんな惨めに誰の役にも立たないで死ぬのは嫌だなあ、せめて最後に誰かを助けて死にたかったと、思ったんだ。 」 「それなら、誰かのために死ぬんじゃなくて、死なないでたくさんのひとを助けるほうが、みんなにとってお得じゃないっすか」 さく。 わたしの草履の音が土を踏み乾いた音をたてた。 想像もしていなかった言葉に驚いて立ち止まりおぶっているきり丸を振り返る。 きり丸は きょとん、としながら首をかしげた。 「そうか。 みんなにとって、お得か。 」 「はい。 お得は正義です」 けらけらと涼風のように笑って 大げさにしがみついてみせた、この、背中の重みが。 その、責任の重さが、私をこの世に繋ぎ止めてくれる重みなのならば。 『死なないで、たくさんのひとを助ける』 その拙い言葉は 探していた鍵を見付けたように 私の胸の奥に かちりとはまり、音をたてた。 そうか。 それならばこんな私でも、 生きていても、いいのだろうか。 笑うことも、許されていいのだろうか。 「美味いもんでも食べましょ!ね!生きてて良かった~って思えますよっ」 言いながらきり丸は地面に降り立ち 団子屋を指差して、にこりと笑った。 「ははは。 さすがだな。 よし、どちらが多く喰えるか競争しよう」 「やっりぃ!!」 飛び跳ねて、ぽん、と軽やかに地面を蹴り きり丸は団子屋に向かい走り出した。 「あっ、なんだおまえ、歩けるじゃないか!」 疲れたあー、虫に刺された足が痛い~と泣きついてきた数刻前が幻のようだ。 「あははは。 たまにはいいじゃないっすか」 「ちゃっかりしてるなあ」 ぱたぱたぱた。 夕焼けに染められた 走るきり丸の美しい髪が風になびいた。 軽やかに、舞うように。 くるくると回るご機嫌なきり丸が振り向いて ふわりとこちらと目があった。 「せんせー、俺、先生と会えて良かった!」 「きり………」 「おれ、先生だいすきっす~!!」 「………っ、」 「…あはは、照れてる」 「っ、大人をからかうな」 「あはは。 」 「きり丸。 」 「はい?」 「私と出会ってくれて、ありがとう。 」 「……………っ!!!」 「なんだ、真っ赤じゃないか。 」 「くっ!なんなんすかもう!」 「はははは。 さあ、腹が減った、早く食べよう」 山を染める茜色を見上げると 怪我をして山田家で世話になった、 あの日の夕焼けを思い出した。 あの日と同じようにして 太陽は神々しく光に満ちながら帰っていく。 たったひとりだった私に かけがえのない存在ができた その奇跡に、感謝をする。 そしてもしも叶うなら 大切な人と暮らす 戦いで覆われたこの、静かに紡ぐ毎日が 美しい、 色とりどりでいっぱいになるといい。 「せんせー、おだんご、甘いの?辛いの?」 「そうだなあ。 甘いやつにしようかな」 「おれもー!」 もぐもぐと団子をめいいっぱいに頬張る きり丸の顔を見て ああ、私はしあわせだ。 そう感じた瞬間に いままで何をしても消えなかった この世への憎しみの真っ赤な炎が 夜のように 静かに 穏やかに鎮まり ゆっくりと藍に色を変えるのが 雪が溶けるようにじんわりと この身に染みていくのがわかったのだ。 焼けるような太陽が沈む。 そして交代するようにして 静かな藍の空が天から落ちる。 それはまるで わたしたちを 許すように、包むように。 おはなしおしまい。 [newpage] お付きあいありがとうございました。 プラネタリウムで観た さそりの話をイメージしています。 たくさんの命をとってきたサソリが溺れ死ぬ間際、どうせ死ぬなら食われて死ねばよかった、と悔やみ、空に登り夜空を照らす星になった、というものです。 さそり座の神話とは別物です 気に入っていただけていたら、 うれしいです。 閲覧いただきありがとうございました。

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