ウィスパー 擬人 化。 擬人化ウィスパー!

擬人化ウィスパー!

ウィスパー 擬人 化

ケモノ臭い。 2人が異変に気付いたのは同時だった。 主人の家に帰宅し足を踏み入れると2人は何を言うでもなく怪訝な表情を見合わせた。 「…たぶん、ケータニャン」 「ええ、また変な物拾ってきましたね。 ですが…これはさすがに酷い」 まるでミキサー機に腐った肉を突っ込んだかのようにあたり一面に充満している。 鼻がもげ取れてしまいそうだ。 ジバニャンは大袈裟でも何でもなく鼻先を両手でつまんだ。 昨夜は飲み過ぎた。 妖怪だって容姿が違えど人間と同じように美味しいものを食べに行ったり飲んだくれたりだってする。 愛嬌があり口達者なジバニャンはあちらこちらで飲み仲間を作ってくる。 仲間と定期的に集まっては酒を飲み交わしほろ酔い気分で景太が寝静まった真夜中にふらっと帰ってくるのだ。 今回は少し予定が違った。 いつも留守番係に徹するウィスパーが「ワタクシも行きたい!」と言いだしたのだ。 特に断る理由もなく連れて行けば緊張からか片手には常にグラスを持ち相槌を打ってはゴクリ、相槌を打ってはゴクリ… そろそろやめろとストップを掛けた頃には後の祭りだった。 出来上がったウィスパーは最初こそ調子よくはしゃいでいたがすぐに真っ青になり口数も減り お手洗いに席を立ってからは姿が見えず。 結局お開きになってからジバニャンが様子を見に行くまで死んでいた。 「だからお前を連れてくのヤだったニャン」 「いいでしょ!たまには私だってハメ外したい時ぐらいあります!」 「ケータの下僕が本業ニャン、本業を疎かにしてハメ外すもクソもないニャン」 「下僕じゃなくて執事です!」 線引きしっかりして下さいよ!ウィスパーが片手を左右に振りながらせ・ん・び・き!とジェスチャーをする。 そんなやりとりをしているとあっという間にご主人様の部屋に到着だ。 どちらともなくそっちが先に踏みこめと無言の圧力を掛ける。 「おら執事しっかりしろニャン」 「こういう時だけ執事扱い」 押し出された背中に鉤爪が容赦なく食い込む。 痛みにヒィヒィ悲鳴を上げながらウィスパーは主人の部屋へとそろりと足を踏み入れた。 「す、すみませんケータくん朝帰りになってしまって…猛省してます」 「ケータただいまニャン!このバカがゲロぶちまけて大変だったニャン!」 「てめー嘘こいてんじゃねーぞ!ぶちまけてねーわ!」 「ゲロったのは否定しないんだ?」 くすくすと2人のやりとりの間に割って入った景太は珍しく勉強机に本を開いていた。 口調は普通。 いつもどおり。 様子も繕われた不自然な物ではない。 景太の住まいへ居候をしている妖怪2匹は景太が機嫌を損ねていない事に安堵した。 朝帰りなど悪い印象があっても良い印象など一つもありはしないのだから。 「お勉強ですか?日も高い内に机に向かうなんて感心ですね」 ああ、コレだ。 間違いない。 この家に充満している異臭の根源に間違いない。 ウィスパーは確信した。 勉強机に向かう景太の背後から手元を覗きこんだウィスパーは賛美もそこそこにその手中より本を摘まみ上げた。 書物は酷く黄ばみ痛んでおり紙の一枚一枚も湿気に侵され波打っておりガサガサだ。 一体何十年前に作られたものだろうか。 「もうウィスパー返してってば」 「ケータ…これどこで拾ってきたニャン?」 いつになく真剣なジバニャンの声色に景太は身構え口を噤んだ。 「答えて下さいケータくん」 すぐに返事ができないのは疾しいことがある証拠だ。 畳み掛けるように今度はウィスパーが景太に詰め寄る。 景太は観念したように口を開いた。 「お、おつかい横町のめっけもんで…」 視線はだんだんと下がり覗きこまなくては表情がうかがえない。 「ふーん、夜中しか営業してない店ですね」 つまり昨夜監視役がいないのをいいことに景太は家を抜け出して夜遊びをしていたのだ。 「あんな路地裏の妖しい店に一人で行くなんて正気じゃない。 痛い目を見ないと学習出来ないのですか?」 ウィスパーのあまりの剣幕に完全に臆してしまった景太は洗いざらい白状する。 その内容はあまりにも夢物語でウィスパーもジバニャンも簡単にはいそうですかと納得出来るものではなかった。 「ゲームソフト、だった?」 「絶対に!間違いない!嘘じゃないし!今日ゲームやろうと思ったら…」 「ばっちい本になっていたと?」 景太は居心地悪そうに視線の先をそわそわと移動させてからコクリと一度頷いた。 [newpage] 子供にとって大人が寝静まった真夜中に外を徘徊するという行為自体が好奇心をくすぐる対象だ。 景太は昨夜おつかい横町の裏路地にある夜しか開店しない胡散臭い骨董品店に足を運んだという。 何か買う訳でもなく体重を掛ければ軋む店内をまわり、棚から物を取れば埃が舞い咳込む。 傍から見れば何でもないそれらが景太には楽しくて仕方がなかった。 ねえおじさんコレなあに?問いかければ無愛想ながらも二言三言返してくれる店長も嫌いではなかった。 そんな無愛想な店長に今日は早めに店じまいをするから早く帰れと言われ野良犬を追い払うように手であしらわれ まだ帰りたくないとも言えず景太は建てつけが悪い扉を重い足取りでくぐり外に出た。 しんと静まりかえった商店街、ゴウンゴウンと機械音が響くコインランドリー、 何が入っているのかゴミの日でもないのに黒い袋がたくさん詰め込まれた大きなゴミ箱。 一歩外へ出れば夜とはこんなにも生きた人間を拒絶するようなものだっただろうかと思うほどに気味が悪い。 そんなとき店の扉の開く音が。 店長が出てきたのだろうか。 店長ではなかった。 ひとりの男が建てつけが悪い扉を開閉し出てきた。 どうやら自分の他にお客さんがいたらしい。 彼もきっと店長に追いだされたのだろう。 男も景太に気がついた。 男とは知り合いではない。 だが気味が悪いと思っていた矢先、自分の他に誰かがいるという事実は景太を安心させた。 「こんばんは。 この店で買い取って貰おうと思ったのに閉店で追い出されてしまったよ」 「あ、こんばんは…俺もです」 男がやれやれと肩をすくめて掲げた袋を目で追うと景太は純粋に何を買い取って貰おうと思ったのか中身に疑問を抱いた。 その視線に気づいた男は何が入っていると思う?と景太の前に袋の口を開いて見せた。 「あっ」 覗きこんだ景太は思わず声を上げていた。 それは両親に買って欲しいおもちゃのリストに入れていたゲームソフトだった。 欲しいソフトはふたつありどちらをお願いしようか迷っていたのでよく覚えている。 「君には何に見える?」 「え、…ゲームソフトですよね?」 今思い返せば男の問いかけは少し奇妙だった気がする。 真夜中にたったひとりでうろうろしている子供相手にまるで昼間ご近所さんと挨拶をするような態度。 いましがた売ろうとしていた物品を無償で赤の他人へ譲るという行為。 だが、ゲームソフトが自分の物になると言う物欲に景太は冷静さを失っていた。 入手ルートがルートなだけに手放しで喜べる訳もなく、喜びを共有してくれるはずのトモダチに黙って足を運んだ先での出来事だ。 景太は後ろめたさから報告も出来ずウィスパーに訝しがられ見つかるまで言い出せずにいた。 「あまりにも軽率です」 なぜそんな高価な物を安易に受け取ってしまうのか。 なにか裏があるのではと少しも疑わなかったのか。 眉間に皺を深く刻んだままわざとらしく溜め息を吐けば強張る小さな肩が僅かに震えたのが視界の端に確認できた。 ウィスパーはそれらに見えないフリをした。 「これが何か判ってるんですか!?これは人殺しの道具なんですよ!」 景太の眼前に古びた本を突きだす。 あのいつもふざけたりとお調子者のウィスパーから。 いつもとは違うぴりぴりとした異様な空気に景太はただウィスパーの言葉を頭の中で反復させていた。 「この本はね人間の… 「もういいニャン!ケータ脅かしてる場合じゃないニャン!」 ジバニャンは乱暴に書物を取り上げるとビニール袋に乱雑に放り込み固く固く封をした。 今最優先になすべきことは過去の行動を咎めることではない。 「かたづ家来とアライ魔将を呼ぶニャン、徹底的に部屋を綺麗にするニャンよ~!」 何をする気なのか。 だが了承の返事を返す気力もない景太はのろのろと言われた通りメダルを探る。 その手は僅かに震えていた。 「次にウィスパーはケータを風呂に入れてくるにゃん!」 「判りました」 「えっ」 先程のウィスパーの様子から出来れば2人きりになりたくない。 気まずい。 ウィスパーの長い説教には慣れているが今はそのどんな雰囲気とも違う。 自分のせいだと理解しているが体や心がついて行かない。 景太は勘弁してくれと救済の眼差しをジバニャンにこっそりと送る。 「ケータわがまま言ってる場合じゃないニャンよ。 このままだとケータ死ぬニャン」 え?今なんて言ったの? ジバニャンはたんたんと当たり前のように言葉を並べる。 景太は11歳の子供だ。 まだ死と言う目には見えない存在を近くに感じた事はない。 耳馴染みなどある訳もないその言葉に頭の中が真っ白になった。 死ぬって当たり前だけどこの世からいなくなっちゃうってこと? 今、緊張によりドクンドクンと激しく脈打つ心臓が止まってしまうと言うこと。 「ウソでしょ?」 「嘘じゃないニャン。 だからさっさと風呂に入ってサッパリしてこいニャン」 「し、死んじゃうかもしれないのに風呂なんかゆっくり入ってらんないよっ!」 「説明は後ほど。 お母様に汗をかいたのでお風呂に入りたい旨を不自然にならないように伝えてきて下さい」 「・・・」 「、ですから説明は後ほど」 納得していない表情のまま景太は重い足取りで一階へと降りて行った。 [newpage] まだ日も明るい内から晒される裸体に羞恥心は当然でウィスパーの視線から逃れようと景太は出来るだけ前屈みに腰を折った。 いつもなら冗談のひとつでも飛ばしては景太の羞恥心を煽るところだがウィスパーは黙ってシャツの袖を捲るだけ。 てっきりひとりで風呂に入るものだと思っていた景太は一緒になって浴室に入ってくるウィスパーに悪い冗談だろうとおおいに戸惑った。 出て行くように訴えども頑なに了承して貰えず、ならばそちらも同じように服を脱げと条件を突き付けたが必要ないと即却下。 「口を開いて、できるだけ大きく」 なにをする気なのか。 俺はどうなってしまうのか。 現状に対する疑問は尽きない。 だが口にすることはなく素直に従った。 …と言うよりはいちいち考えることを放棄した。 どうせなにか反論したところで畳み掛けるようにすべて却下されるのだろうから。 「この紙を口に含んで、ワタクシがいいと言うまで絶対に吐き出したり飲み込んだりしないでください。 いいですね」 白い和紙を口に押し込められ水分のないそれは舌に張り付き気持ちが悪い。 ならば望み通り水をやろうとでも言いたげに降ってきた突然のシャワーの水に景太は危く和紙を飲み込んでしまうところだった。 後はなんの拷問だと疑念を抱かずにはいられないほど粗雑にタオルで全身を擦られての繰り返しだ。 夏休みに海に出掛け健康的に日焼けした肌はその摩擦にびくびくと震えあがった。 自分の必死の哀願も受け入れて貰えないと悟ると景太はいよいよ半べそをかき、身にまとう水気も気にせず縋るようにウィスパーの首にしがみついた。 「怒ってるからわざと意地悪するの?痛いって言ってるのに…ううっ、うっ…もっと優しくしてよっ」 「ヤな言い方しますね、…そっちこそわざと言ってんですか?」 優しくしてよなんて思わせぶりだ。 ん、とウィスパーは右手を開いて景太の眼前に晒す。 景太は意味が判らず彼と彼の掌を交互に見やった。 「吐き出して」 「え?」 「紙です。 さっきの、吐き出してください」 そうだった。 慌てて吐き出した和紙を見て景太は絶句した。 口に含む前まで確かに白かった紙が墨を吸ったようにまっ黒なのだ。 「毒です」 「え!?」 毒ってあの毒?ゲームの中でじわじわとHPが削られて行くやつ? そんな物がどうして?いや十中八九あの得体のしれない汚い本が原因なのだろう。 景太は改めて己の行動を反省した。 「全部絞り出したんでもう大丈夫です」 「俺、もう死なない?」 「はい」 死なせません。 死なせたりするものですか。 あなたは年をとって老いて寿命を迎えて私に妖怪ウォッチを返してから死ぬんです。 ホッとしたことにより膝が折れた景太をウィスパーはバスタオルで受けとめ包み込んだ。 書物は場所を取る。 ゆえに昔は大量の書物を保管する場所といえば日当たりの悪い奥まった蔵が最適だった。 そんな保管状態では追いやられた書物たちは湿気を帯びカビ臭くなる。 書物を読む際は唾液含ませた指先でひっついてしまった書物のページを捲るのが当たり前だった。 その習性を活かした毒殺法がある。 毒液にたっぷりと浸せた書物を殺したい相手に贈るのだ。 殺したい相手が夢中になって読み漁る内容の物語を見つけてこなくては。 書物の内容に没頭すればするほどに無意識に習性は繰り返され、書物から指へ、指から舌へ、じわじわと相手の体は蝕まれる。 「ケータくんは、人を呪わば穴二つ、…って言葉をご存知ですか?」 「聞いたことあるけど…よく判らない」 「人を呪いたければ呪い返しによって自分が命を落とすことも厭わない…それぐらいの覚悟でやれってことニャン」 黄ばんだ本はいったいどれだけの人の命を奪い続けたのだろうか。 殺意を抱くどれだけの人の手から手へと渡されたのだろう。 憎悪が層になった呪いとは相当の時間を費やさなければ浄化はできない。 誰かに押し付ける事も出来ない。 自分の意思で受諾してしまった呪いは簡単に手放すことは出来ない。 手放すには誰かに受け取って貰うしかない。 だが誰がそんなモノを受け取ってくれる? じゃあ逆にどんなモノなら受け取ってくれる? あなたが欲しいものなら受け取ってくれる? 例えばあなたが欲しがっていたゲームソフトなら。 道端に落ちていた1万円札ならどうだ?交番に届ける?誰も見ていない。 こっそり懐に忍ばせない保証は? この世には欲に目が眩まない聖人ばかりか?そうではないだろう? 「お願いですからあまり変なもん貰ってこんで下さい。 ね?ケータくん」 「ごめんなさい………ねえ、それ…どうするの?」 今回ばかりは勝手な行動が過ぎた自分が悪い。 素直に謝罪を口にした景太は次にウィスパーの手元を見やる。 汚らしい本は今透明なビニール袋に包まれてウィスパーの手中にある。 ウィスパーはそれでおもむろに口元を隠すと「秘密」とだけ言ってこの話は打ち切られてしまった。 景太はしつこく教えを請うことはしなかった。 この妖怪が終わりと言ったら終わりなのだ。 その後は何を言ってもはぐらかされてしまう。

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#ジバウィスケー #擬人化 その本は人の皮で出来ている

ウィスパー 擬人 化

ケモノ臭い。 2人が異変に気付いたのは同時だった。 主人の家に帰宅し足を踏み入れると2人は何を言うでもなく怪訝な表情を見合わせた。 「…たぶん、ケータニャン」 「ええ、また変な物拾ってきましたね。 ですが…これはさすがに酷い」 まるでミキサー機に腐った肉を突っ込んだかのようにあたり一面に充満している。 鼻がもげ取れてしまいそうだ。 ジバニャンは大袈裟でも何でもなく鼻先を両手でつまんだ。 昨夜は飲み過ぎた。 妖怪だって容姿が違えど人間と同じように美味しいものを食べに行ったり飲んだくれたりだってする。 愛嬌があり口達者なジバニャンはあちらこちらで飲み仲間を作ってくる。 仲間と定期的に集まっては酒を飲み交わしほろ酔い気分で景太が寝静まった真夜中にふらっと帰ってくるのだ。 今回は少し予定が違った。 いつも留守番係に徹するウィスパーが「ワタクシも行きたい!」と言いだしたのだ。 特に断る理由もなく連れて行けば緊張からか片手には常にグラスを持ち相槌を打ってはゴクリ、相槌を打ってはゴクリ… そろそろやめろとストップを掛けた頃には後の祭りだった。 出来上がったウィスパーは最初こそ調子よくはしゃいでいたがすぐに真っ青になり口数も減り お手洗いに席を立ってからは姿が見えず。 結局お開きになってからジバニャンが様子を見に行くまで死んでいた。 「だからお前を連れてくのヤだったニャン」 「いいでしょ!たまには私だってハメ外したい時ぐらいあります!」 「ケータの下僕が本業ニャン、本業を疎かにしてハメ外すもクソもないニャン」 「下僕じゃなくて執事です!」 線引きしっかりして下さいよ!ウィスパーが片手を左右に振りながらせ・ん・び・き!とジェスチャーをする。 そんなやりとりをしているとあっという間にご主人様の部屋に到着だ。 どちらともなくそっちが先に踏みこめと無言の圧力を掛ける。 「おら執事しっかりしろニャン」 「こういう時だけ執事扱い」 押し出された背中に鉤爪が容赦なく食い込む。 痛みにヒィヒィ悲鳴を上げながらウィスパーは主人の部屋へとそろりと足を踏み入れた。 「す、すみませんケータくん朝帰りになってしまって…猛省してます」 「ケータただいまニャン!このバカがゲロぶちまけて大変だったニャン!」 「てめー嘘こいてんじゃねーぞ!ぶちまけてねーわ!」 「ゲロったのは否定しないんだ?」 くすくすと2人のやりとりの間に割って入った景太は珍しく勉強机に本を開いていた。 口調は普通。 いつもどおり。 様子も繕われた不自然な物ではない。 景太の住まいへ居候をしている妖怪2匹は景太が機嫌を損ねていない事に安堵した。 朝帰りなど悪い印象があっても良い印象など一つもありはしないのだから。 「お勉強ですか?日も高い内に机に向かうなんて感心ですね」 ああ、コレだ。 間違いない。 この家に充満している異臭の根源に間違いない。 ウィスパーは確信した。 勉強机に向かう景太の背後から手元を覗きこんだウィスパーは賛美もそこそこにその手中より本を摘まみ上げた。 書物は酷く黄ばみ痛んでおり紙の一枚一枚も湿気に侵され波打っておりガサガサだ。 一体何十年前に作られたものだろうか。 「もうウィスパー返してってば」 「ケータ…これどこで拾ってきたニャン?」 いつになく真剣なジバニャンの声色に景太は身構え口を噤んだ。 「答えて下さいケータくん」 すぐに返事ができないのは疾しいことがある証拠だ。 畳み掛けるように今度はウィスパーが景太に詰め寄る。 景太は観念したように口を開いた。 「お、おつかい横町のめっけもんで…」 視線はだんだんと下がり覗きこまなくては表情がうかがえない。 「ふーん、夜中しか営業してない店ですね」 つまり昨夜監視役がいないのをいいことに景太は家を抜け出して夜遊びをしていたのだ。 「あんな路地裏の妖しい店に一人で行くなんて正気じゃない。 痛い目を見ないと学習出来ないのですか?」 ウィスパーのあまりの剣幕に完全に臆してしまった景太は洗いざらい白状する。 その内容はあまりにも夢物語でウィスパーもジバニャンも簡単にはいそうですかと納得出来るものではなかった。 「ゲームソフト、だった?」 「絶対に!間違いない!嘘じゃないし!今日ゲームやろうと思ったら…」 「ばっちい本になっていたと?」 景太は居心地悪そうに視線の先をそわそわと移動させてからコクリと一度頷いた。 [newpage] 子供にとって大人が寝静まった真夜中に外を徘徊するという行為自体が好奇心をくすぐる対象だ。 景太は昨夜おつかい横町の裏路地にある夜しか開店しない胡散臭い骨董品店に足を運んだという。 何か買う訳でもなく体重を掛ければ軋む店内をまわり、棚から物を取れば埃が舞い咳込む。 傍から見れば何でもないそれらが景太には楽しくて仕方がなかった。 ねえおじさんコレなあに?問いかければ無愛想ながらも二言三言返してくれる店長も嫌いではなかった。 そんな無愛想な店長に今日は早めに店じまいをするから早く帰れと言われ野良犬を追い払うように手であしらわれ まだ帰りたくないとも言えず景太は建てつけが悪い扉を重い足取りでくぐり外に出た。 しんと静まりかえった商店街、ゴウンゴウンと機械音が響くコインランドリー、 何が入っているのかゴミの日でもないのに黒い袋がたくさん詰め込まれた大きなゴミ箱。 一歩外へ出れば夜とはこんなにも生きた人間を拒絶するようなものだっただろうかと思うほどに気味が悪い。 そんなとき店の扉の開く音が。 店長が出てきたのだろうか。 店長ではなかった。 ひとりの男が建てつけが悪い扉を開閉し出てきた。 どうやら自分の他にお客さんがいたらしい。 彼もきっと店長に追いだされたのだろう。 男も景太に気がついた。 男とは知り合いではない。 だが気味が悪いと思っていた矢先、自分の他に誰かがいるという事実は景太を安心させた。 「こんばんは。 この店で買い取って貰おうと思ったのに閉店で追い出されてしまったよ」 「あ、こんばんは…俺もです」 男がやれやれと肩をすくめて掲げた袋を目で追うと景太は純粋に何を買い取って貰おうと思ったのか中身に疑問を抱いた。 その視線に気づいた男は何が入っていると思う?と景太の前に袋の口を開いて見せた。 「あっ」 覗きこんだ景太は思わず声を上げていた。 それは両親に買って欲しいおもちゃのリストに入れていたゲームソフトだった。 欲しいソフトはふたつありどちらをお願いしようか迷っていたのでよく覚えている。 「君には何に見える?」 「え、…ゲームソフトですよね?」 今思い返せば男の問いかけは少し奇妙だった気がする。 真夜中にたったひとりでうろうろしている子供相手にまるで昼間ご近所さんと挨拶をするような態度。 いましがた売ろうとしていた物品を無償で赤の他人へ譲るという行為。 だが、ゲームソフトが自分の物になると言う物欲に景太は冷静さを失っていた。 入手ルートがルートなだけに手放しで喜べる訳もなく、喜びを共有してくれるはずのトモダチに黙って足を運んだ先での出来事だ。 景太は後ろめたさから報告も出来ずウィスパーに訝しがられ見つかるまで言い出せずにいた。 「あまりにも軽率です」 なぜそんな高価な物を安易に受け取ってしまうのか。 なにか裏があるのではと少しも疑わなかったのか。 眉間に皺を深く刻んだままわざとらしく溜め息を吐けば強張る小さな肩が僅かに震えたのが視界の端に確認できた。 ウィスパーはそれらに見えないフリをした。 「これが何か判ってるんですか!?これは人殺しの道具なんですよ!」 景太の眼前に古びた本を突きだす。 あのいつもふざけたりとお調子者のウィスパーから。 いつもとは違うぴりぴりとした異様な空気に景太はただウィスパーの言葉を頭の中で反復させていた。 「この本はね人間の… 「もういいニャン!ケータ脅かしてる場合じゃないニャン!」 ジバニャンは乱暴に書物を取り上げるとビニール袋に乱雑に放り込み固く固く封をした。 今最優先になすべきことは過去の行動を咎めることではない。 「かたづ家来とアライ魔将を呼ぶニャン、徹底的に部屋を綺麗にするニャンよ~!」 何をする気なのか。 だが了承の返事を返す気力もない景太はのろのろと言われた通りメダルを探る。 その手は僅かに震えていた。 「次にウィスパーはケータを風呂に入れてくるにゃん!」 「判りました」 「えっ」 先程のウィスパーの様子から出来れば2人きりになりたくない。 気まずい。 ウィスパーの長い説教には慣れているが今はそのどんな雰囲気とも違う。 自分のせいだと理解しているが体や心がついて行かない。 景太は勘弁してくれと救済の眼差しをジバニャンにこっそりと送る。 「ケータわがまま言ってる場合じゃないニャンよ。 このままだとケータ死ぬニャン」 え?今なんて言ったの? ジバニャンはたんたんと当たり前のように言葉を並べる。 景太は11歳の子供だ。 まだ死と言う目には見えない存在を近くに感じた事はない。 耳馴染みなどある訳もないその言葉に頭の中が真っ白になった。 死ぬって当たり前だけどこの世からいなくなっちゃうってこと? 今、緊張によりドクンドクンと激しく脈打つ心臓が止まってしまうと言うこと。 「ウソでしょ?」 「嘘じゃないニャン。 だからさっさと風呂に入ってサッパリしてこいニャン」 「し、死んじゃうかもしれないのに風呂なんかゆっくり入ってらんないよっ!」 「説明は後ほど。 お母様に汗をかいたのでお風呂に入りたい旨を不自然にならないように伝えてきて下さい」 「・・・」 「、ですから説明は後ほど」 納得していない表情のまま景太は重い足取りで一階へと降りて行った。 [newpage] まだ日も明るい内から晒される裸体に羞恥心は当然でウィスパーの視線から逃れようと景太は出来るだけ前屈みに腰を折った。 いつもなら冗談のひとつでも飛ばしては景太の羞恥心を煽るところだがウィスパーは黙ってシャツの袖を捲るだけ。 てっきりひとりで風呂に入るものだと思っていた景太は一緒になって浴室に入ってくるウィスパーに悪い冗談だろうとおおいに戸惑った。 出て行くように訴えども頑なに了承して貰えず、ならばそちらも同じように服を脱げと条件を突き付けたが必要ないと即却下。 「口を開いて、できるだけ大きく」 なにをする気なのか。 俺はどうなってしまうのか。 現状に対する疑問は尽きない。 だが口にすることはなく素直に従った。 …と言うよりはいちいち考えることを放棄した。 どうせなにか反論したところで畳み掛けるようにすべて却下されるのだろうから。 「この紙を口に含んで、ワタクシがいいと言うまで絶対に吐き出したり飲み込んだりしないでください。 いいですね」 白い和紙を口に押し込められ水分のないそれは舌に張り付き気持ちが悪い。 ならば望み通り水をやろうとでも言いたげに降ってきた突然のシャワーの水に景太は危く和紙を飲み込んでしまうところだった。 後はなんの拷問だと疑念を抱かずにはいられないほど粗雑にタオルで全身を擦られての繰り返しだ。 夏休みに海に出掛け健康的に日焼けした肌はその摩擦にびくびくと震えあがった。 自分の必死の哀願も受け入れて貰えないと悟ると景太はいよいよ半べそをかき、身にまとう水気も気にせず縋るようにウィスパーの首にしがみついた。 「怒ってるからわざと意地悪するの?痛いって言ってるのに…ううっ、うっ…もっと優しくしてよっ」 「ヤな言い方しますね、…そっちこそわざと言ってんですか?」 優しくしてよなんて思わせぶりだ。 ん、とウィスパーは右手を開いて景太の眼前に晒す。 景太は意味が判らず彼と彼の掌を交互に見やった。 「吐き出して」 「え?」 「紙です。 さっきの、吐き出してください」 そうだった。 慌てて吐き出した和紙を見て景太は絶句した。 口に含む前まで確かに白かった紙が墨を吸ったようにまっ黒なのだ。 「毒です」 「え!?」 毒ってあの毒?ゲームの中でじわじわとHPが削られて行くやつ? そんな物がどうして?いや十中八九あの得体のしれない汚い本が原因なのだろう。 景太は改めて己の行動を反省した。 「全部絞り出したんでもう大丈夫です」 「俺、もう死なない?」 「はい」 死なせません。 死なせたりするものですか。 あなたは年をとって老いて寿命を迎えて私に妖怪ウォッチを返してから死ぬんです。 ホッとしたことにより膝が折れた景太をウィスパーはバスタオルで受けとめ包み込んだ。 書物は場所を取る。 ゆえに昔は大量の書物を保管する場所といえば日当たりの悪い奥まった蔵が最適だった。 そんな保管状態では追いやられた書物たちは湿気を帯びカビ臭くなる。 書物を読む際は唾液含ませた指先でひっついてしまった書物のページを捲るのが当たり前だった。 その習性を活かした毒殺法がある。 毒液にたっぷりと浸せた書物を殺したい相手に贈るのだ。 殺したい相手が夢中になって読み漁る内容の物語を見つけてこなくては。 書物の内容に没頭すればするほどに無意識に習性は繰り返され、書物から指へ、指から舌へ、じわじわと相手の体は蝕まれる。 「ケータくんは、人を呪わば穴二つ、…って言葉をご存知ですか?」 「聞いたことあるけど…よく判らない」 「人を呪いたければ呪い返しによって自分が命を落とすことも厭わない…それぐらいの覚悟でやれってことニャン」 黄ばんだ本はいったいどれだけの人の命を奪い続けたのだろうか。 殺意を抱くどれだけの人の手から手へと渡されたのだろう。 憎悪が層になった呪いとは相当の時間を費やさなければ浄化はできない。 誰かに押し付ける事も出来ない。 自分の意思で受諾してしまった呪いは簡単に手放すことは出来ない。 手放すには誰かに受け取って貰うしかない。 だが誰がそんなモノを受け取ってくれる? じゃあ逆にどんなモノなら受け取ってくれる? あなたが欲しいものなら受け取ってくれる? 例えばあなたが欲しがっていたゲームソフトなら。 道端に落ちていた1万円札ならどうだ?交番に届ける?誰も見ていない。 こっそり懐に忍ばせない保証は? この世には欲に目が眩まない聖人ばかりか?そうではないだろう? 「お願いですからあまり変なもん貰ってこんで下さい。 ね?ケータくん」 「ごめんなさい………ねえ、それ…どうするの?」 今回ばかりは勝手な行動が過ぎた自分が悪い。 素直に謝罪を口にした景太は次にウィスパーの手元を見やる。 汚らしい本は今透明なビニール袋に包まれてウィスパーの手中にある。 ウィスパーはそれでおもむろに口元を隠すと「秘密」とだけ言ってこの話は打ち切られてしまった。 景太はしつこく教えを請うことはしなかった。 この妖怪が終わりと言ったら終わりなのだ。 その後は何を言ってもはぐらかされてしまう。

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【悲報】妖怪ウォッチ、今度は腐女子に媚びるwwwwwww

ウィスパー 擬人 化

ウィスパーの人間版 人気投票第一位のコマさんの擬人化はコマさんファンだけでなく、妖怪ウォッチを知る人であればだれでも知っているという周知の事実です。 理由はコマさんの妖怪のときのキャラクター同様、人間に姿を変えても愛らしい容姿からではないでしょうか。 そしてアニメではたびたび出てきているものの、なかなか人気を確立することのできないウィスパーの擬人化が存在していました。 その理由は、やはり容姿からでしょう。 コマさんの擬人化が田舎っぽい親しみやすい人間とは裏腹に、 ウィスパーの擬人化は顔だけは妖怪のままで、身体が八頭身です。 blogimg. blogimg. jpg キーマンであったり、心肺停止に陥った主人公を蘇生しようとしたりと、妖怪ウォッチを語るに欠かせないウィスパー。 しかし、笑いのネタにはされるものの、この容姿ではファンを獲得するのは難しいのではないでしょうか。 世間から見るウィスパー レギュラー妖怪の一人のため、人気投票では3位を守っているウィスパーですが、アニメで流れる擬人化がお笑い要因のために、自分なりの擬人化を作り上げている人も多くいるそうです。 もう…ウィスパー八頭身めっちゃ出てるしそろそろ擬人化してもよくね!? 願望 — 呉愛 クレア kra1017 ものっそ正直に言うと、ウィスパーが八頭身姿にならなかったら、こんなにはまらなかったと思う — あらぶる801山崎 nangtaiyamazako 勘違いをしていました。 ウィスパーの背の高いヴァージョンはあくまでも「 八頭身ウィスパー」であり、妖怪ウォッチファンはウィスパーの擬人化が公式で発表されることを心待ちにしているそうです。 意見の中には視聴者の保護者の声も多数あり、八頭身のウィスパーが最終形態だと、心配という発言も見られました。 奥が深いですが、擬人化と八頭身は違うのですね。 確かに妖怪だから、姿かたちを変えるのはたやすいことなのでしょうね。 ウィスパーグッズを紹介 ウィスパーの擬人化は残念ながら公式ではありませんでしたが、過去や正体など、まだまだ解明されていないウィスパーに、今後期待が集まります。 そこで、人気1位になる前に、ウィスパーグッズをいくつかご紹介いたします。 大人にも人気を誇っている妖怪ウォッチですが、主人公が小学生のために小学生向けに作られるオモチャや、保護者向けのグッズもたくさんあります。

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